From:HIRO
今回は、改めて、「セールスライターの本来の仕事の役割」について考えてみたいと思います。
「セールスライターとはタイプライターを前にしたセールス担当者である」
この言葉は、小売業界向け広告代理店ジュディス・K・チャールズ・クリエイティブ・コミュニケーションのオーナー社長ジュディス・チャールズの言葉と言われています。
この言葉を現代の言葉に置き換えるのなら、
「セールスライターとはパソコンを前にしたセールス担当者である」
と言えます。
この「セールスライター」という言葉の定義は、僕が知りうる限り、最高の定義だと思います。
なぜなら、「商品・サービスを売る」という目的が明確に表現されているからです。
セールスライターの本来の仕事の役割は、いつだって、どんな状況だって「商品・サービスを売ること」からブレることはないのです。
よくあるセールスライターとして、犯しがちな過ちとは?
僕はセールスライターとして犯しがちな最大の過ちは、セールスコピー(コピーライティング)を素人と同じ目で見て、判断してしまうことにあると思っています。
例えば、
「こんな言葉に消費者は反応しない」
「日本語の表現が間違っている」
「直接的な表現で、刺激が強すぎる」
など、自分以外の上司や同僚、そしてクライアントでさえも、1つのセールスコピーに様々な意見が入ってきてしまえば、何が正しいのかが全く分からなくなってしまいます。
これらの意見はすべて、広告のプロではなく素人としての意見です。
これは僕の経験からも言えることですが、セールスコピーに素人の意見が入ってきてしまうと「綺麗にまとまっているけれど、誰の心にも届かないセールスコピー」に劣化させられてしまう危険性があります。
広告への評価を巡っては、プロの現場でさえも、平気でこのようなことが起こっています。
しかし、そんなことをしてしまえば、あなたはセールス担当者ではなく、アーティストかエンターテイナーになってしまいます。
あなたのクライアントがあなたに求めていることは、アーティスティックな広告を作ることでも、面白い広告を作ることでもありません。
あなたのクライアントがあなたに期待していることは、商品・サービスを一つでも多く売ることにあります。
そして、セールスコピー(コピーライティング)を素人と同じ目で見て判断してしまえば、せっかく一生懸命になって書いたセールスコピー(コピーライティング)が、ただのクライアントの時間とお金を浪費させてしまうだけのものになり下がってしまいます。
セールスライターが意見を聞くべき相手とは?
もちろん、セールスコピー(コピーライティング)を他の人に見てもらうことは重要です。
でも、「セールスコピー(コピーライティング)を見てもらう人は慎重に選ぶべき」というのが僕の意見です。
「あなたのセールスコピー(コピーライティング)をレビューしていい人」というのは言葉の力を深く理解していて、顧客心理、セールスコピーの原理・原則を理解している人に限ります。
なぜなら、セールスコピー(コピーライティング)を書くための知識・技術であるセールスライティングとは、単なる机上の空論でも意見の集まりでもないからです。
セールスライティングとは、歴史的に多くの先人たちが、実際に商品・サービスを現場で売りながら、効果を確かめた「言葉」やその背後にある「普遍的な人間心理」を研究してきた体系的な知識・技術の集まりだからです。
傲慢でもなんでもなく、それを素人が判断・意見することには無理があります。
でも、セールスコピー(コピーライティング)の素人の意見ももちろん大切です。
ただし、セールスコピー(コピーライティング)の素人の意見として、広告のプロであるセールスライターが聞くべき意見はたった1つです。
それは、
「作ったセールスコピー(コピーライティング)を読んでみて、その商品・サービスが欲しくなったかどうか?」
ということです。
セールスライターが、パソコンを前にしたセールス担当者である限り、セールスライターに課せられた使命はただ1つ。
それは、その商品・サービスの魅力を相手の悩みや願望と結びつけて、言葉と文章の力によって、その商品・サービスを欲しくさせて、消費者に実際に商品・サービスを買ってもらうことにあります。
セールスコピー(コピーライティング)の本来の目的とは?
セールスコピー(コピーライティング)の本来の目的は、人に気に入ってもらうことではなく、人を楽しませることでも、有名で権威のある広告賞を受賞することでもありません。
セールスコピー(コピーライティング)の本来の目的とは、商品・サービスを売ることです。
賢明な広告主であれば、セールスライターが書いたセールスコピー(コピーライティング)を人がそれを気に入るか、面白いか、楽しいかなどは気にしません。
もちろん、気に入ってもらえたり、内容が面白かったりすれば、それはそれで素晴らしいことです。
でも、セールスコピー(コピーライティング)とは、ビジネスの目標を達成するための手段であり、広告主にとってその目標とは、売上を伸ばすこと。そして利益を増大させることに尽きるのです。
セールスライターは絶対に、この事実から目をそらしてはいけません。
広告のプロでも陥ってしまう落とし穴とは?
広告は、自分、もしくはクライアントの商品・サービスを売るために存在している。
これは考えてみれば、いかにも単純明快なことなのですが、広告のプロでそれをしっかり認識している人が少ないというのが、僕の実感です。
彼らは、実に凝ったでデザインの広告、美しいカタログ、最高の長編映画にも匹敵するほどアーティスティックなCMを作ることは得意です。
しかし、時として売上と利益の増加というクライアントが一番期待しているビジネス目標を見失い、自分たちは実際アーティストでも、エンターテイナーでも、映画制作者でもなく、「パソコンを前にしたセールス担当者」なのだという事実を忘れてしまうのです。
広告が美しかったり、有名な芸能人を起用していたり、読んでいて面白いからといって、必ずしも広告のプロと呼ばれている彼らが作る広告に、クライアントの商品・サービスを購入させるような説得力と影響力があるとは限りません。
そもそも、「美しい広告、有名な芸能人、楽しいストーリー=商品・サービスを売るための説得力と影響力」と言った因果関係は、どこにもありません。
それよりもむしろ、お金をかけない白黒のシンプルなダイレクトメールが、驚異的な売り上げ・利益数字を叩き出すことだってあります。
例えば、あるセールスライターはこんなことを言っています。
「そのユニークなDMは大いに評判になった。だが、新しいビジネスの機会は生まれなかった。人をあっと言わせるにしては、ずいぶん費用がかかったものだ。その会社が次に送ったDMは2ページのシンプルなセールスレターと返信ハガキだった。このときは8%のレスポンスがあった。内容は同じで、飾りをいっさいなくしたものだ。」
セールスライターの本来の仕事の役割とは?
このように、セールスライターが本来、しなければならない仕事とは、最小限のコスト、時間、労力を使って、クライアントの売り上げと利益を上げることに尽きます。
ということは、もし、シンプルな文字だけのセールスレターの方が、何十倍のコストのかかるフルカラーのパンフレットよりも効果的なら、必要以上にコストをかけずに、シンプルな文字だけのセールスレターを送るべきです。
「売る難しさ」と「アーティスティックな難しさ」は、全く別次元のもの
このように考えていくと「売る難しさ」と「アーティスティックな難しさ」は、全く別次元のものであると気がつきます。
プロのセールスライターは見た目も華やかで、かっこいい、おしゃれな文章をあれこれと考えるのではなく、自社やクライアントの商品・サービスを深く探求します。そして、消費者がその商品・サービスを買いたいと思う理由をいくつも見つけ出し、それをセールスコピーで的確に訴えかけ、消費者がその広告を読んだら具体的に反応するようにしなければなりません。
ですので、セールスライターに必要なことは人を驚かせるような創造力ではなく、むしろ、セールスコピーを見た消費者が買いたいと思わずにいられなくなるような説得力と影響力の方なのです。
まとめ
最後に、僕の好きな広告業界のプロたちの言葉を紹介します。
ぜひ、セールスライターとしての本来の仕事の役割を見失わないようにするためにも、手帳にメモをするなりして、いつでも心にとどめておくようにしましょう。
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広告は娯楽のために書かれるものではない。したがって、娯楽の基準で判断せずに、すべからくセールスマンを基準とすべきである。慰安的な目的で広告を読むような人は、おそらくあなたの望んでいるものからはほど遠いだろう。このような人を対象にすると、ついにはセールスマンとしての本分を忘れ、売ろうとする意欲を失って芸人化し、拍手かっさいを求めるようになるのがオチである。 『科学的広告法』クロード・ホプキンズ(誠文堂新光社、1996年)
人々に行動を起こさせる広告を書くのは、読み手の知性に変わらぬ敬意を払っていて、売ろうとしている商品のメリットと真剣に向き合っている人である。 バトン・バートン・ダースタイン&オズボーン(BBDO)社共同創設者 ブルース・バート
良い広告とは、広告自体に注意を引きつけないで、商品を売ることのできる広告である。広告は、読み手の注意を商品に集中させなければならない。自分の技巧をうまく隠すのが、プロの広告エージェントの責務である。『ある広告人の告白[ 新訳]』 デイヴィッド・オグルヴィ(海と月社、2006 年)
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